あなたへ

思い切り外に出ると目の前にふとんくんがいた。


「あれっ……瑠梨ちゃん…?」


喫茶店の近くで雨宿りしていたようだ。


先程降り始めたばかりなのに、もう強くなっている。


「ふとっ……お客様が見えたので…。傘…持ってきました」


少ししか走ってないのに、運動不足のせいで息切れしてしまう。


「僕のために…?……ていうか、瑠梨ちゃん濡れちゃってるから、もっとこっちおいで?」


こっちおいで………???


「あ、いえ大丈夫です!!!私は濡れちゃっても…」

「良くないでしょ?風邪引いたら大変だよ」


相当心配してくれているのか、ふとんくんは私の腕を掴み引き寄せる。


うおぉ…。ふとんくんの手が私の腕に…。


「……」


恥ずかしくてふとんくんの顔が見れない。


「えっと…それで…」


ふとんくんの手が私の腕から離れると、ふとんくんが喋り出す。


「あっ…そう。この傘、使ってください!」


ぐいっと傘を前に出す。


「えっ、いいの?」

「大丈夫です…!使ってください!」


よくよく見るとこの傘はお父さんのだ。


だけど、そんな事はお構い無し。


「ありがとう。でも、申し訳ないよ。近くにコンビニあるっぽいし、そこで傘を買って…」


ふとんくんは優しく断ってくる。


そりゃそうか…、いくら何でもおこがましいよね…。


「あれ、あなた…」


突然、後ろから声が聞こえた。

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