あなたへ
「瑠梨、ここの衣装なんだけど…って聞いてる?」
「……、っあ。ごめん聞いてない」
「しっかりしてよ……」
あれから月日は流れ夏休み目前。
梅雨も明け、本格的に夏が始まった今日この頃。
学校は文化祭の準備で少しずつ慌ただしくなってきた。
「どうしたの?ほんと最近元気ないよ?」
「んー…」
「ふとんくんが来るんだーって騒いでたあんたはどこいったの?」
「遥か遠くに行っちゃったかも…」
「まじか…。なんかあった?」
放課後。
周りは文化祭の準備でガヤガヤとうるさい。
お店の内装、衣装、メニュー案の作成で皆が楽しそうにやっている。
「実はさ…」
私は、美結に全て話したあの日からふとんくんが全然お店に来ない事を話した。
「なるほどなぁ…忙しくて来れてないと?」
「そうなの!投稿とか見たら、CDの収録とか、歌ってみた動画の最終調整とかで忙しくて、ここ1ヶ月間ろくに休みも取ってないらしくて…」
「やっぱ、駆け出しの歌い手さん達に比べたらめちゃめちゃ忙しいんだろうね…」
「来てくれてた事自体が稀なケースなんだよね…当たり前に思ってた私って…」
「まぁまぁ、そう落ち込まないの。まだまだ時間はあるでしょ?」
「そうだね…!!」
美結が励ましてくれる。
そうだ。まだ文化祭まで時間は沢山ある。
ふとんくんもその間に1回は来てくれるかもしれない。
「よっしゃー!張り切ってメニュー考えますか!!」
「その意気だよ、瑠梨。と…その前にこの衣装合わせたいからちょっと体貸してくれる?」
「もちろん!」
そんな期待を抱きながら、文化祭の準備に取り掛かった。