あなたへ

文化祭2日目。


ずっと待っていたこの日がやっと来た。


「ふとんくん…」


衣装を身にまとい、朝から大盛況の教室の中、私の頭の中はずっとふとんくんでいっぱいだ。


「あんた…ふとんくんって言うのこれで何回目??いい加減うるさいんだけど」


さっきまで笑顔で接客していたとは思えない美結が、真顔で毒を私に吐く。


「仕方ない!楽しみなんだもん!」


開き直りながらそう言う。


「楽しみなのは分かるけどもうちょっと働いてよ…。あ、ほらあそこ。お客様呼んでる」


全然働かない私を見て呆れながら背中をグイグイ押され、お客様のいる方へ飛ばされる。


仕方なくトボトボと歩きながら、髪の毛を顔の方へ持ってくる。


私のイメージのお化けは、貞子。


「いらっしゃいませ…」


怖い映画を進んで観ない私からしたら、名前は知ってるけど……程度のもの。


頑張って私のイメージの中の貞子を演じてみる。


「うおぉ、、貞子だ…怖ぇ…」


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