四つ脚の絵書き歌

6 ―少年の推理大会―



犬の吠える声が聞こえる。ぼんやりと目を覚ました。

視界が酷く滲んでいた。線が全てボヤけていた。暫くして、眼鏡がズレていることに気づいた。祥一は慌てて眼鏡をかけ直した。

「動くな」

獣が唸るような低い声が聞こえた。
見ると、先ほどの少女がこちらを睨みつけていた。横で犬も牙を剥いて威嚇している。
祥一は、何か失礼なことをしてしまっただろうかと自分の記憶を辿り始めた。

「聞いているのか。それとも、おれの鳴き声は通じていないのか」

「……へっ?」
祥一は無礼を承知で少女をじっと見つめた。少女は負けじと祥一を見返してきた。暫く睨み合い、祥一が音を上げた。ダメだ、色々と恥ずかしくて見ていられない。

しかし、聞き間違いでなければ、この子は今自分の声のことを「鳴き声」と表現した。


おかしな少女がいたものだ。

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