四つ脚の絵書き歌

生物が好きなのであろう乙女は、瞬時に記憶の旅を始める祥一に胡乱気な目線を寄越した。

「……何でわざわざ敵に聞かなきゃならねぇんだ?」

「敵?誰がー?」「お前だよっ!!」"わんっ!!"

祥一は漸く乙女心を理解した。
年頃の女子というものは、年頃の男子を「馬鹿みたい」とか「アホじゃないの?」とか、はたまた「エロガッパ」などと罵ってくるものである。
確かに男子も馬鹿でアホでエロガッパな為特に反論はして来なかったが、今回は違う。

と言うか、僕は違う。

この葛馬祥一様の定期テストの点数を彼女に伝えれば、きっと彼女も誤解を解いてくれるだろう。同学年かは知らないが、少なくとも中学生以上ではあるはずだ。

祥一はとりあえず賢そうな咳払いをした。まず数学の点数を記憶から呼び起こす。
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