四つ脚の絵書き歌
無事に紅葉狩りが終了し、山を降りる途中までは家族が一緒だった。
はしゃぐ妹が駆け出して、姉がそれを追って、父も母もそれを追いかけていった。
勿論自分も追いかけたのだ。
ただ、規格外に足が遅かっただけで。
要は、置いていかれたのか。
ここまで考え、祥一は肩をがっくり落とした。
せめて誰かに気づいてほしかった。それほどまでに僕の存在感は薄かっただろうか。
確かにクラスでも存在感は薄かった。クラスの集合写真を見せるまで、同じクラスの人だと気づいてもらえなかった時もあったぐらいだ。いつも本にばかり夢中になって、自分から人に話しかけに行くようなことなんてまずなかったし。
しかし、家族となれば話は別だろう。
見た目はひ弱でも、父ほどには力がなくても、父の力仕事を手伝えるほどには筋肉も発達している。
妹の世話だってちゃんとしている。保育園のお迎えにだって、1番行っているという自負があった。
しかし、それでもそんなに必要ない存在だったのだろうか。
それを思うと胸が締め付けられる。家に帰りたくなくなってくる。
だから、考えないようにしよう。
しかし、考えずにいるのはとても難しいことだ。他に何を考えていればいいのだろうか。
圏内に入ることや人工物を探すことはすっかり頭から吹き飛んでいた。
祥一は脳内で議論すべき事象を探してうろつき始めた。
既に手元すら見づらくなっていた。太陽はもう西の彼方に沈んでしまったようだ。
暗くなると困ると、先ほど考えていたような気がする。どうしてだったか。