俺らの本
「ふー、お腹がいてー。葵、急に悪かったな。」


そう言うと、葵は音が出そうなほど、首を横に振った。


「むしろ大ちゃんがこんなに笑うところなんて、久しぶりに見た。」


言われてみると、いつ以来か?と思うほど、久しぶりにここまで笑った気がする。


「そうだな。」


「そうだよ!学校でもいつもみたいにさ…。」


「いつもみたいに?あれがいつもの俺だ。」


抑揚のない声で言うと、葵はハッとした顔をした。


さっきのは、たった一瞬の出来事だ。


これで俺が変わることはない。


そして、これからも。


もう俺に期待をしないでくれ。


は?


……俺、今何を考えた?


…期待?


「ごめんね。気にしないで。」


横から葵の声が聞こえてきて、俺も首を横に振る。


「俺こそ。」


少し重苦しい空気のまま、無言で歩き続ける俺と葵。

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