カクテル紅茶館の事件簿録
よん.兄と弟
「え?」
冬も終盤の凍えるような寒さの中、降る雪にも臆せず放課後の寄り道を決め込んだ私を待ち受けて居たのは可愛くも衝撃的な存在だった。
「お。タマちゃんいらっしゃい。今日は来ないかと思ってた。
雪は大丈夫だった?」
ヌイはいつもと寸分違わぬ飄々とした声で私を心配してくれる。
「はい。取り敢えず肩についてる雪を拭いて?
暖炉の前で体を温めてて?すぐに紅茶を淹れてくるから」
ヌイの言葉はちゃんと私に届いている。
何を言っているかもしっかり理解できる。
だけど口は最初に発した『え』の形から動かない。
視線はある一点から離れない。