カクテル紅茶館の事件簿録
だって、事実そうなのだ。
いくら言葉を尽くそうと、いくら許しを得ようと、この人は二度に渡り子を置き去りにしたのだ。
「ごめんなさい。だいぶ自分勝手過ぎるわよね。
でも、自分でもよく分からないの。
葵のお父さんは、まだ葵がお腹の中にいる時に交通事故に遭って亡くなったの。
とても悲しかった。でもそんなこと言ってられないって思った。
この子の為に元気でいなきゃって。なのに、どうしてなのかしら。
葵の育児と生活が落ち着いてきたらなんだか糸が切れてしまったの。
もちろんまだまだ全然大人の力がいるのよ?
葵一人でなんてミルクだって作れないんだから。
だけどどうにも前が見えなかった。
夜になって葵の泣き声を聞くのが辛くなった。
泣きたいのは私よって思ってしまった。そう思ったら……。
気付いた時には葵を手離してしまっていた」