カクテル紅茶館の事件簿録
それからカウンターの椅子を引く音がしたかと思うと突如店内に高い弦楽器の音が響きたのだ。
びっくりして学習の手を止めた私はヌイの姿に釘付けになった。
ヌイが、あのヌイが、顎と肩で挟んでいる弦楽器はバイオリンだ。
音楽が不得意な私でも間違うはずもない。
あれは確かにバイオリン。
「ヌイって本当に何者なの?」
思わず溢れた言葉にヌイはまた微笑むだけでそのままバイオリンを奏で続けた。
最初こそ驚きに手が止まってしまったけど、ヌイが奏でるバイオリンの音色は音の高さとはチグハグに重厚感があり自然に耳に馴染んだ。