火事場の王子様
「おはようございます」

「おはよう、刈谷さん」

「今朝はありがとうございました」

「へ?…どういたしまして?」

いや、今日は今初めて会ったんだが……

と聡美が自席に行く姿を、芳晴は見つめた。

そして、無意識に彼女に何かしたのか?と、暫く悩まされるのだった。



お礼を言うことができ、いつもよりスッキリとした気持ちで仕事していた聡美だが、午後になり午前に終わらせた仕事のミスを発見する。

午前中の浮かれた自分を呪いながら、必死で修正に取り掛かった。


とっくに定時から2時間が過ぎ、聡美に限界が近づいていた。

カチャカチャ……カチャ…。

……………………。

パソコンの画面には、大量の『S』の文字が羅列する。



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