夜の庭園ー少女たちの消える庭ー
容子と私は幼なじみでした。

幼稚園からずっと同じクラスの仲良しです。

ですが、最近の私は、容子の夢見がちなところについていけなくなりつつありました。


「だって、裏庭のバラのアーチは夜の庭園に繋がってるんだよ」

呆れ顔の私に、容子は今日もそう言い募ります。


校舎裏には児童が立ち入ってはいけない。

私たちの小学校には、そんな決まり事がありました。

もともと校舎のすぐ後ろには雑木林があるばかりで、狭くて薄暗いだけの場所です。

他の子にとっては決まりがなくてもわざわざ足を踏み入れたくなるような場所ではない校舎裏が、最近の容子のお気に入りでした。

校舎裏の隅には朽ちた花壇があり、その入口には枯れた蔦の巻き付くアーチが立っていました。

日の当たらない空間にある朽ちた花壇の存在は謎めいていて、「お化け花壇」と呼んで怪談話のネタにする子もいるくらいです。

けれど容子に言わせると、校舎裏の不気味なお化け花壇も、「夜の庭園につながっている、裏庭のバラのアーチの花壇」になってしまうのでした。


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