いらっしゃいませ
キリマンの彼女

夏が近づくと言うのに、少し気温が低い午後。

【忘れ物 カフェ 】の中には…

年齢不詳のとわこさんが、今日も忙しく…





動いて…ませんね…。



ちょっと、とわこさん!?
まったくもー。
ちょっと目を離すと、すぐこれだ!

カウンターの中の、やけに座り心地の
良さそうな椅子で、居眠りしてる。


俺、ずっと思ってたけどさぁ。
この椅子、なんのためにあんの?!
暇さえあれば、うとうとしてさぁ。
忙しいんだっつーの!
お、き、な!


ああ、もう!
耳元で、うるさいこと…。
なんのためって…?ヤスむためだよ。ヤス。
寝起きのとわこさんが、ニヤリと笑う。


とわこさん、うまいー。
と、パチパチ手を叩くチビちゃん。


うまくねぇよっ!
チビ、フキン落ちた。拾って!洗って!

…はぁ…。なんで、こんな使えないバイト、
雇ってんの、この、ばーさ…


あ!?


あ!いや…なんでもないよー。
とわこさん!


ヤス。

はい!

その笑顔…客の前でするんじゃないよ?

…なんでだよ。



あ、予約の客が来る時間だよ。
…店の窓から、それらしい女性が歩いて
来るのが見えた。


おやおや…。
思いつめた顔した子が来たこと。
長くなりそうだね…。

ヤス。

ん?

後はまかしたよ。

わかった。後で、注文取りにチビいかすよ。

そうしておくれ。
あ、そのキリマン…。

え?ああ、これ?

蒸らしすぎ。入れ直しな。


…あ。忘れてた。
いつ見てた?もしかして、背中にも
目ついてんのか…?

ヤス。
ばかもヤスみヤスみ言いな。


とわこさん、うまいー!


チビ…もいっかいフキン洗ってこい…。






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