いらっしゃいませ
ほらほら。美味しいコーヒーだよ。
冷めないうちに、お飲み。
…はい。
鼻をすんとすすって、カップを持つ手の
頼りないことよ…。
お前さん、片想いは初めてかい?
…こんなに苦しいのは…。
そう言って、一口飲んで。
美味しい…とつぶやく。
それは良かった。
食べ物や飲み物は、心の栄養にもなる。
いくら、苦しくても…ちゃんと食べなさい。
よくないことばかり、考えてしまうから。
わかったね?
あ…はい。
で?彼はなんて?
……あかりを傷つけられない…って。
ふむ。なるほど?
それじゃ、忘れられないわけだ。
彼が、誠実な人間だとして。
少なからず、お前さんにも気持ちがあると。
そう…感じてるんだね?
うるんだ瞳で、顔を上げる。
返事をせずとも…その顔を見ればわかるがね。
あかりさんは、大切な友達なんだね?
コクコク…と、うなずく。
傷つけたくないのは、同じだと。
また、うなだれるように…うなずく。
わかったよ。
お前さんは、いい子だね。
え?
いい子だ。自信を持ちな。
つらいのは、好きな気持ちが本当なのと、
友達を思う気持ちが、本当な証拠だよ。
…だがね。
大事な人の不幸の積み木に、
自分の幸せの積み木は、のらないものさ。
そう言って、とわこさんは
優しく笑った。