ラヒの預言書
一本の巻物がソルの目の前に置かれた。
「王家とこの国の預言が記されているそうだ」
「預言……」
言葉にしてみて更に、ソルは胸が高鳴った。
今までのどんな書物より強く興味を引かれる。
「古より伝えられしこの預言書は、最後のラヒ族の末裔と言われた神官キリコが、わざと難解な古代ラヒ語を使って記したものだ。未だかつて解読に至った者はなく、王族なら見る事が出来る代物だが、今となっては誰も見向きもしないただの古い書物となっている。…しかし、私は信じたいのだ。この預言は私に宛てられたものだと!…だから、何としても知りたい」
キルバルの熱い眼差しを受けると、これは只の夢物語じゃない様な気がして、何やら分からない高揚感で心が震えたが、その反面ソルは怖くなった。
「私などにその様な大役は、とても無理でございます!!」
「何が欲しい?解読した暁には、何でも褒美を取らそう」
「いいえ!私は神に仕える身、褒美など望みません!...........どうかお許しください!!」
「…………………」
沈黙が支配する中、恐る恐る顔を上げると、キルバルが黙ってこちらを見ていた。
凄い目で睨んでいたかと思うと、バッと立ち上がり、ソルの横まで来ると、耳の側まで口を近づけた。
「やっとお前を見つけたのだ...........無理にでもやってもらう。それまでお前を、決して離しはしない。……何が欲しいか考えておけ。必ず代価は受け取ってもらう」
あまりの迫力に言葉が出てこなかった。
ただ、ただ、平伏した床に置かれた自分の震えた手を見下ろす事しか出来なかった。