ラヒの預言書
「おぉ!今度は白い肌が赤く染まってゆくぞ!!さぞかし夜は艶かしい花が咲くのでしょうなぁ~!!ヒッヒッヒッ!」
見るからに下劣な男が、舐めるような視線を送ると、ソルは、小さく身を縮めて俯いた。
良く見ると肩が小刻みに震えている。
思わずマントを開き、その小さな身体を包む様に抱き締めた。
「わぁっ!」
「想像も止めてもらおう。それは私だけが見れる蝶の姿。不愉快だ」
キルバルが一睨みすると、途端に男は血相を変えて、慌てふためいた。
「そっそれは申し訳ありません!どうかお許し下さい!どうやら少し飲みすぎたようです。そっそれでは今宵はこれで失礼します!!」
そそくさと男が逃げて行く姿を見ながら、マントの中で大人しく収まっている体温を感じた。
「大丈夫か?」
「...........はい」
俯いたまま顔を上げようとしない。
「お前、そんなに簡単に赤くなっては、今みたいな輩は直ぐ付け入って来るぞ?」
「...........すいません。こんなに男の人に囲まれて話したのは初めてで……それで……それで...........」
「どうしたのだ?泣いているのか?私の所為か?今のは、そなたを怒ったのではないぞ?」
落ち着かせようと、色々声を掛けるが、何故か余計に泣かせている様で、終いにはしゃくり上げる様にソルが泣き始めた。
「分かっており…ヒック…ま…ヒック…す...........でも...なぜか...ヒック…止まらな…ヒック...のです」
「……………………」
「申し訳...ヒック…ありませ…ヒック...」
離れようとするソルを、今度は優しく抱き寄せてみると、いとも簡単に引き寄せられる細い身体が、何とも儚く思えた。
「キル.......バル様?」
「泣き止むまで私の中で隠れていろ……拒絶は許さぬ...よいな?」
女を胸に抱く事など、今まで腐る程経験してきた筈なのに、何故かキルバルは落ち着かなかった。
先程女人と知らされて驚いたからだろうか?
初めての感覚に戸惑ったまま、キルバルはこの体温をずっと離せずにいた。