ラヒの預言書

「最近では、母君のロメエル様もお命を狙われる始末。キルバル様は少し焦っておいでなのです。母君をお守りしたい一心なのでしょう......」


「そうだったのですか…」


「あっでも、ソル様がそんなに思い詰めないで下さいね?今まで完全に解読した者はおりませんでしたし、例え無理だとしても、キルバル様はお命をお取りになったりしないはずです!」


「え?………いっ命!?」


「冗談ですよ!フフフッ...........脅かし過ぎてしまいましたね。さぁさ、湯浴みでもなさって、今日は早めにお休み下さいまし」


「はっはい...」


手際よく着物や装飾品を片付けて、ステーシアは出て行った。

部屋の中には石造りの風呂があり、円形で広い湯船は、10人は一気に入れそうだった。

白と薄桃色の天蓋で囲われ、中に入るとたっぷりのお湯が蝋燭の灯りをゆらゆら揺らしていた。


「素敵なお風呂…」


「ソル様、湯浴みのお手伝いをいたします」


何処からとも無く現れた侍女達が、ソルの服に手をかける。


「あっあの!お風呂は一人で大丈夫ですから!」


「そう言われましても……」


「本当に…大丈夫ですから!あっ!そう!預言書の事で考え事があるから、誰も入って来てはダメです!一人じゃないと気が散るのでっ!」


「...........分かりました。それでは私共は部屋の奥に待機しておりますので、何かありましたらこちらを鳴らして、お呼び下さい」


「分かりました!ありがとうございます!」


金色の細かい細工が施された呼び鈴を置いて、侍女達は下がって行った。

やっとの事で一人きりになり、ソルは漸く一息つくことが出来た。




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