ラヒの預言書
咄嗟に出た自分の言葉にヒヤッとする。
どんなに砕けた態度を取っていても、目の前に居るのはギルドラ(王族)なのだ。
その距離を見誤っては決していけない。
「良いのだ。そなたは面白い!ハッハッハ!!」
お腹を押さえながら、豪快に笑う姿は、驚きと同時に、何故か親近感を覚えた。
普段は大人びていて、表情も殆ど崩さない冷静で冷たそうな印象のキルバルも、破顔すると歳相応の青年に見えた。
「...........フフッ」
宮殿に来てから、ずっと不安で張り詰めていた心が、少しずつ解けていくのを感じていた。
初めの頃のわだかまりも薄らぎ、解読作業を始めて気が付くと3ヶ月が過ぎようとしていた。
「あ~...........ここなんだよな~...........ここの解釈がいつも引っかかる。ここもここもずっと保留にしたままだし。やっぱりあの本が無いと...........でも、何でこんなに珍しい本ばかりがあるのに、あの本だけ無いんだろう?あぁ~...........困った.........」
長椅子に身体を預けて横になると、読んでいた本を顔に乗せた。
「...........お腹空いた....................」
大きく口を開けて溜め息をついた時だった。
「んぐっ!!」
暗く遮っていた視界が、パッと明るく開けた。
「キルバル様っ?!んぐっ!!」