ラヒの預言書
宮殿の後宮の更に奥の外殿に、皇后ロメエルの宮がある。
後宮には、ロメエルを妃に迎える前から居る側室達が何人か居たが、王はロメエルを別格に寵愛なさった為、後宮より少し離れた所に守る様に宮が置かれていた。
外殿の周りは後宮とはガラリと雰囲気が違く、珍しい花や、木々が庭園を飾っていた。
「皇后様に拝謁を」
「キルバル様、かしこまりました」
侍女に促されるように部屋に入ると、懐かしい香りが鼻を喜ばせた。
幼い頃に毎日の様にこの部屋で過ごしていた。
早々に自分の部屋を当てがわれたが、キルバルにとっては一番安心出来る母親の香りだ。
「まぁ、キルバル!よく来てくれました」
「ご機嫌麗しゅう御座います。皇后様」
「ここでは母上でよいのです!キルバル、貴方も変わりありませんでしたか?」
「はい.......私は変わりなく。母上、お身体の具合は如何でしょうか?」
「もう、すっかり良くなっていたのよ。でも王様が心配なさってね。漸く今日から、お許しが出たのよ.......フフッ本当に心配症だわ」
久し振りに皇后の衣装を纏ったロメエルは、とても美しく、以前の様な明るい笑顔を見せていて、キルバルは、ホッと胸を撫で下ろした。
「心配症な事は御座いません。私も当然の処置だと思っていました。母上はあまり自身を厭わな過ぎるゆえ、周りは心配が絶えませぬ」
「あら、嫌だわ。すっかり貴方も父上に似てきたわね?.......フフッ」
「母上、慣例の月祭儀に出席なさると伺いましたが、本当に宜しいのでしょうか?お身体が優れぬ様なら、またの機会に見送っても宜しいかと。それにまた何者かに襲われるやもー」