ラヒの預言書
「レーテって、…だってそこはっ…そこはっ!!どうしてそんな所に...........」
その瞬間、抱き締める力が更に強くなった。
「コルトーは、亡くなりました。窃盗の罪でデルガ(貴族)に処罰されて。ソル、お前はあの場に居たんですよ...コルトーとずっと一緒に居た。最後まで...........」
「...........そんな?!...........嘘だ...........そんなの信じない...........」
「信じられないなら行ってきなさい。レーテの丘に...........」
「あなたっ!何もそこまで言わなくてもいいじゃないっ!!」
「..........行かなきゃ...........行ってきますっ!!」
布団から飛び出す様に起き上がると、走り出した。
レーテの丘までは、ロドゥラの街からだと、かなり遠い。
息が切れて何度も歩きながら、それでも止まることはしなかった。
到着する頃には、大分陽は落ちて、空は夕焼け色に染まっていた。
初めて来たレーテの丘は、よく見るガロン(平民)の墓地とは違って、特に囲われてる訳でもなく、いつくもの小山が転々とする、殺風景な所だった。
夕暮れのこの時間が、余計この場所を物悲しいものに見せる。
人気の無い墓地を見渡していると、遠くに誰かが座っているのが見えた。
体格のいい女の人。
その人影は地べたに座り込み、力無く頭を垂れていた。
「おばさん……」
「あぁ...ソルかい?こんな遠くまで、良く来てくれたね?ありがとうね…」