ラヒの預言書
口の中で迷っている舌が、キルバルの熱い舌で何度も絡め取られて、何処にも逃げられない。
苦しさに悶えながらも、何度も繰り返し襲って来る感覚に耐えていた。
「はぁ.......はぁ.......はぁ.......」
息継ぎをするだけで精一杯なのに、口付けの合間に何度も問われる。
「まだ、昨夜の事を思い出さぬか?」
答える間もなく、また口を塞がれる。
何度この問をされただろうか、どのくらいこうしていたのだろうか、息も絶え絶えに、漸く唇が離されると、キルバルの熱い眼差しと視線がぶつかった。
「もうよい.......これで許してやろう。お前が思い出さぬなら、それでいい。だが、今この時は心に刻め.......決して忘れるな.......よいな?」
熱に浮かされた様にボーッとする視界の中、必死に首を縦に振る。
「迎えをやる。ここで待っていろ」
キルバルは体を離すと、そのまま東屋を後にした。
残されたソルは、今起きた出来事をただ反芻する事で精一杯だった。
何度頭を整理しようと、動かしてみても、真っ白なままで、思う様に出来ない。
「昨夜は何も無かったんだ.......少しは悪ふざけしたのかも知れないけれど、キルバル様は悪酔いした私をずっと介抱してくれただけ。それなのに私は自分の事ばかりで……きっとあんな事をしたのは、私への罰だったんだ.......」