ラヒの預言書

「起床ー!!起床ー!!」


けたたましく鳴り響く鐘の音と共に、神官見習いのお勤めは始まる。

今まで起きたい時に起き、寝たい時に寝ていたガドランにとって、この時間の起床はとても辛いものだった。


「.......ガドラン様、.......ガドラン様!起きる時間で御座いますよ?」


「.......リロ、うるさい。まだ眠い.......起こすな」


「ガドラン様!!今日から神官見習いのお勤めなのですよ!!家ではないのですっ!!」


「.......ん?」


重たい瞼を無理矢理持ち上げると、真っ白いフードを被った侍従のリロが困った顔でガドランを覗いていた。


「.......あぁ、そうか.......忘れてた」


半分眠ったままの頭を起こして立ち上がると、リロが神官見習いの衣を差し出して来た。

質素で飾り気の無い無地の白い衣、袖やフードの縁に少しばかり刺繍がしてあるが、ガドランが持っているどの服に比べても安っぽい作りだ。

髪は横に束ねて編み、首飾りと耳飾りは神殿の代々伝わる模様と形で揃えられている。

今の時代には古臭く、ありふれた装飾品。

頭や顔はなるべく人目に晒さぬ様に、常に上着のフードを被る事が義務ずけられている。


「常にフードを被らぬといけないのか?暑苦しいぞ」


「風紀を乱さぬ為、なるべく顔は隠す様、義務ずけられております。我慢して下さいませ。それから上の位の神官とはお許しが出るまで目を合わせる事もなりません。宜しいですか?」


「.......フンッ。.......それで、こんな朝っぱらから起きて一体何をするんだよ」


「え~.......まずは、沐浴の井戸の前に集合し、身を清める事から始まるそうです」






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