ラヒの預言書
「そう言えば、今回の神官見習いの中に、ガロン(平民)が混じっているって知ってるか?それも女.......」
ガドランが暇を持て余していると、前の列から興味深い話が耳に舞い込んで来た。
誰に聞かれてもいいと思っているのか、その噂話をしている二人は、声を落とすこと無く話し続けている。
「え?そうなのか?そんな事って有り得るのか?」
「.......まぁ、かなり珍しいが、資格上問題は無いからな、現に副神官第二位の地位にアルトエ様が居られるからな。アルトエ様も今でこそ身分を上げられたが、もとはガロンだからな」
「あぁ~確かにそうだったな。上の方の神官様は滅多にお姿を現さないから忘れておったわ」
「でも、ここだけの話、俺達が出家した年にガロン出の者が混じるのは何か嫌だよな?出家する栄誉はデルガ(貴族)の特権みたいなもんだろ?あいつらと一緒にされるのは腹が立つ」
「まぁ、確かにな.......侮辱された様で許し難い事は確かだ」
「噂をすればほら、彼奴じゃないのか?一人だけ孤立して止まってるわ」
男達の指差す方を見て見ると、周りと比べると一際小さな背中が人の流れを遮る様に止まっていた。
「男だらけの中で、女が肌を晒して沐浴なんて出来るわけないだろ」
「普通はそうだけど、その女、見習い志願の時に、大口叩いたって言う話だからな。ククッ.......どうするのか見物だな」
(へぇ~.......彼奴、女だったのか。あの時は顔がよく見えなかったから気が付かなかったが.......)