ラヒの預言書
少しづつ前に進む内に、近付いて来たその背中は微かに震えている様だった。
( あ~ぁ.......あんなに怯えて、どうするつもりだ?)
通り過ぎる神官見習いの何人かは、指導役の神官達にバレない様にコソコソと嫌味や野次を飛ばして通り過ぎている。
「何やら騒がしい様ですが、何かあったのでしょうか?」
「ん.......ほら彼奴。あの時の.......」
「あぁ、騒ぎを起こしていたガロンですか。あんな所に突っ立ったまま、何をしてるのでしょうか?」
「さぁな.......」
噂話の発端の二人が、これ見よがしにまた野次を飛ばして通り過ぎた。
「偉そうなガロン、デルガの真似はここまでか?沐浴すら出来ぬなら、さっさと荷物を纏めて出て行け」
「聖なる神殿の沐浴場を、穢す前に帰れ!痴れ者が!!」
「おいっ!!」
咄嗟にガドランが間に入ろうと一歩前へ踏み出した瞬間、白い衣が宙を舞って視界を遮った。
「っ!!」
バサッとその衣が地面に落ち、視界が開けると、それまで衣に隠れていたであろう、華奢な背中が沐浴場に向かって走っていた。
女の為に作られていない神官見習いの衣は、前だけ隠すように作られていて、背中は露わになっている。
男のものとは違う白く滑らかな背中が、清らかな水を浴びて、衣を透けさせた。
神官見習いの若い男達は、驚きと下心で皆釘付けだ。
さっきまでうるさかった野次も止み、その者が沐浴場から上がる瞬間を、今か今かと息を飲んで待っている。