ラヒの預言書

「なんと.......彼奴は女子でしたか」


侍従のリロも気が付いた様で、目を丸くしている。

勇敢だったその背中に、いつまでも上がってこない為、再び野次が飛び始めた。


「早く上がれよ!次が控えてるんだ!!」


「どうした?上がれぬのか?さっきの威勢はどうした?」


「ハハッ!どれどれ、私が手伝ってやろう!!」


中々動かない様子に業を煮やした男達が、腕を伸ばして無理矢理引っ張り出そうとするが、振り向きざまに、振り払われた。


「私に触るなっ!!独りで上がれるっ!!」


凛とした声が沐浴場に響き、皆が一斉に静まりかえった。

ザバッと勢い良く立ち上がったその者は、ワナワナと震えながらも、真っ赤な顔で啖呵を切る。

思い切り透けた薄い衣が全身に張り付き、艶かしい女の身体を露わにした。


「あの女子、周りは敵だらけで、この後どうするのか。ガドラン様は、関わりになられませんよう、面倒事に巻き込まれますゆえ」


リロの忠告を半分に、ガドランは走り出していた。

一足飛びで自分の衣を一枚脱ぎ、動けずにいるその小さな身体に巻き付けた。


「ガドラン様?!!」


思わず守る様に抱き寄せたその者の身体は、ガドランの胸にすっぽり収まる程華奢で、柔らかい。

そっと覗き込むと、必死に我慢しているのか、驚きで見開いた瞳は涙で潤んでいた。

ガドランはその表情に、一瞬息を飲んだが、慌てて衣のフードを深く被せて隠すと、声を張り上げた。


「ラージ様っ!一つ宜しいでしょうか!」


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