ラヒの預言書
「何の為にここに居るのか、忘れた訳ではあるまいな?」
「そんな事、言われなくとも分かってますっ!!」
最近の浮ついた心の隙を見透かされた様で、無性に腹が立った。
「分かってるならいいが、お前には正式に私の寵妃として祭儀にも同席してもらう」
「.......分かりました。私も今、やっと決心しました。無礼を承知で一つだけ条件があります」
「いいだろう.......なんだ?」
「私はキルバル様に、予言書の解読役としてここに連れて来られました。表向きは側室候補として置かれてますが、私は神官見習いです。解読が成功して、私の役目が終わったなら、必ず神官として神殿に戻してください............清いままで」
「清いまま.......それは、私の物にはならないと言っているのか?」
「そうです。私はあくまで解読役、仮の妃として扱ってください。そうしてくださるなら、私はキルバル様の側に仕えましょう」
「.......なんと強情な」
頑なで挑戦的な瞳がキルバルを捉えていた。
時折見せる覚悟の様な物が、いつも気になっていた。
その心はいつも何を思っている。
今それを聞いた所で、容易に話すまいと感じていた。
今はまだこれでよい。
もっと近くで、全て手中に入れるまでは.......このままの距離で許してやろう。
「宜しいですか?」
「.......分かった。それならば早速、着いて来い」
「えっ?どこへ」
「いいから言う事を聞け」
連れて行かれたのは、先程まで居た自分の部屋だった。
「ステーシア、用意してあるか?」
「はい。中に」
キルバルは、ソルに振り返りもせず、そのまま衣装部屋へ入って行った。
訳も分からず追い掛けて部屋に入ると、キルバルは、一角に置いてあるテーブルと椅子の前に立って居た。
「ここに座れ」