ラヒの預言書
12. 月祭儀
「リロっ!!今戻ったぞっ!!」
宿舎の自室の扉を開ける前から、大声で侍従を呼んだ。
案の定、周りを歩いていた神官見習い達は、驚いた様にガドランを盗み見る。
そんな事お構い無しに、今度は扉を強く叩いた。
すると、カチャリと鍵を外す音と共に、焦った顔のリロが顔を出した。
「どうなさいましたガドラン様っ!!こんな無作法な事をー」
「そんな事より聞いてくれっ!!王宮に彼奴が居たんだっ!!やっと見つけたっ!!必ず取り戻すっ!!」
「ガドラン様っ!!お静かに、取り敢えず中へっ!!」
王宮絡みの話を、堂々と部屋の外で話す訳には行かない。
変な噂でも立てば、命の危険にも直結するからだ。
それは四大貴族であっても例外ではない。
リロは興奮した主人の腕を引くと、中に向かい入れて、廊下を確認すると扉を閉めて確りと鍵を掛けた。
「少し落ち着いて話して下さい。まず、椅子に座って、お茶を用意致しますから、喉を潤して.......」
「分かった.......」
少し我に返ったのか、いつもの冷静なガドランの声に、リロは部屋の奥へと背中を押す。
ガドランが椅子に座ったのを確認して、予め用意していた茶葉に湯を注いだ。
「それで、彼奴とはソルの事ですか?」
「そうなんだっ!!彼奴が.......ソルが王宮で、まるで何処ぞの姫の様に囲われていたんだっ!!」
茶器を取り落とそうとする寸での所で、取り押さえる。
「囲うですとっ?!!そんな、まさかっ!!」
「本当だ。この両の目でしかと見た。話もしたし、綺麗に着飾ったあの者を、この手で今しがた抱き締めたのに、邪魔が入って連れ帰れなんだ。今追い出しても、何とも口惜しいっ!!」
「なんとっ!!ガドラン様っ!!王宮で囲われていた女をその場で抱き締めたのですかっ?!!」