出稼ぎ公女の就活事情。
居たたまれない。
ぎゅっと握りしめたスカートの布はきっとすでに皺ができてしまっているだろう。
「飲み物はいかがですか?ここは果物とヨーグルトを混ぜ合わせたジュースも人気らしいです」
さらりとした口調に仕草でテーブルにメニューを広げられて、「はぇ?」と気の抜けられ声が喉を震わせた。
ジュースって、いま?
呆気に取られるけれど、そういえば喉も渇いている。あんみつはサッパリしているけれど、トロリとした甘みも、餡やもちの感触も口の中に少し残ってしまうもので。
わたしはキョトンとしながらも、
「あ、はい」
と、素直にメニューを覗いていた。
バナナのジュースとイチゴのジュースで悩む。
どちらも定番でヨーグルトと合うことも間違いないだけに悩ましい。
「ううん、と。……バナナ、かな?」
やっぱりまずはド定番で、次があればイチゴにしよう。
カルダさんはわたしのその言葉を聞くなりさっと店員さんに声をかけてバナナのヨーグルトジュースとコーヒーのおかわりを頼む。
その様子はなんというかスマートだ。
本当にこの人は女性にモテるのだろうな、とか思う。うん、普段は厳しくて怖いからこそコロッとハマっちゃう人は多そうだ。
--次、はリルがいいな。
カルダさんは素敵でスマートな大人の男の人だけれど、わたしはやっぱりリルがいい。
二人で甘いものを食べてお互いに少しずつ食べ比べてみたりしてみたい。
なんてことを思い浮かべてしまって、一人でこっそりと焦った。
というかわたしが言ったことに対しての反応が何もないんだけど!
まさかこのままなかったことにされるのでは?
疑惑が頭をもたげる。
だけどこうも間を開けられてしまうと今更ぶり返すのもキツい。
つい真剣にジュースを選んでしまったけれど、もしかして嵌められた?
一人こっそり焦っているうちに、わたしのグラスもカルダさんのカップも空になってしまう。
「では行きましょうか」
「へ?……ぇ?」
すい、と伝票を持ってカウンターへと向かうカルダさんを慌てて追いかけた。
頭の中は混乱して、咄嗟の声も出なければ反応もできない。
なんとなくこのままだと流されるということだけはわかっているのだけれど。
--どうしよう。
このまま流されてなかったことにされるなんてあんまりだ。
わたし、結構腹くくって話したのよ?
先を進むカルダさんはこれまでのわたしの後ろを一歩下がっていた時とは違い、スタスタと目的地に向けて歩いて行ってしまう。
だけどその目的地がわたしには予想もつかないから、戸惑いしかない。
とりあえず方向からは、邸ではなさそうということがわかるだけ。
「--カルダ、さんっ!待って下さい!いったい」
いくつかの門を曲がって、小さな公園の前を通り過ぎようというところで、わたしは意を決した。
なのに少し先を歩いているカルダさんは振り向きもしなければ足を止めもしない。
なんなのよいったい。
さすがにイラッとしてしまう。
追い抜いて文句の一つも言ってやろう。
そう決意して足を早めた。
けれど。
その足は、視界に入った建物の脇に掲げられた見覚えのある看板に、止まった。
ぎゅっと握りしめたスカートの布はきっとすでに皺ができてしまっているだろう。
「飲み物はいかがですか?ここは果物とヨーグルトを混ぜ合わせたジュースも人気らしいです」
さらりとした口調に仕草でテーブルにメニューを広げられて、「はぇ?」と気の抜けられ声が喉を震わせた。
ジュースって、いま?
呆気に取られるけれど、そういえば喉も渇いている。あんみつはサッパリしているけれど、トロリとした甘みも、餡やもちの感触も口の中に少し残ってしまうもので。
わたしはキョトンとしながらも、
「あ、はい」
と、素直にメニューを覗いていた。
バナナのジュースとイチゴのジュースで悩む。
どちらも定番でヨーグルトと合うことも間違いないだけに悩ましい。
「ううん、と。……バナナ、かな?」
やっぱりまずはド定番で、次があればイチゴにしよう。
カルダさんはわたしのその言葉を聞くなりさっと店員さんに声をかけてバナナのヨーグルトジュースとコーヒーのおかわりを頼む。
その様子はなんというかスマートだ。
本当にこの人は女性にモテるのだろうな、とか思う。うん、普段は厳しくて怖いからこそコロッとハマっちゃう人は多そうだ。
--次、はリルがいいな。
カルダさんは素敵でスマートな大人の男の人だけれど、わたしはやっぱりリルがいい。
二人で甘いものを食べてお互いに少しずつ食べ比べてみたりしてみたい。
なんてことを思い浮かべてしまって、一人でこっそりと焦った。
というかわたしが言ったことに対しての反応が何もないんだけど!
まさかこのままなかったことにされるのでは?
疑惑が頭をもたげる。
だけどこうも間を開けられてしまうと今更ぶり返すのもキツい。
つい真剣にジュースを選んでしまったけれど、もしかして嵌められた?
一人こっそり焦っているうちに、わたしのグラスもカルダさんのカップも空になってしまう。
「では行きましょうか」
「へ?……ぇ?」
すい、と伝票を持ってカウンターへと向かうカルダさんを慌てて追いかけた。
頭の中は混乱して、咄嗟の声も出なければ反応もできない。
なんとなくこのままだと流されるということだけはわかっているのだけれど。
--どうしよう。
このまま流されてなかったことにされるなんてあんまりだ。
わたし、結構腹くくって話したのよ?
先を進むカルダさんはこれまでのわたしの後ろを一歩下がっていた時とは違い、スタスタと目的地に向けて歩いて行ってしまう。
だけどその目的地がわたしには予想もつかないから、戸惑いしかない。
とりあえず方向からは、邸ではなさそうということがわかるだけ。
「--カルダ、さんっ!待って下さい!いったい」
いくつかの門を曲がって、小さな公園の前を通り過ぎようというところで、わたしは意を決した。
なのに少し先を歩いているカルダさんは振り向きもしなければ足を止めもしない。
なんなのよいったい。
さすがにイラッとしてしまう。
追い抜いて文句の一つも言ってやろう。
そう決意して足を早めた。
けれど。
その足は、視界に入った建物の脇に掲げられた見覚えのある看板に、止まった。