泥に咲く花

大人しそうな人でも誰かに話を振られれば 簡単に口と心とパンドラの箱が開く

終業式は学生にとって金曜日と同価値、いやそれ以上の存在である。一方始業式とは、月曜日と何ら変わらない苦痛の存在である。
そう、こんな地獄の入口みたいな日だ、どこもかしこも死んだ顔を重そうに抱える学生ばかり。
そして俺、上草連(かみぐさ れん)もその中の一人だ。せめてもの救いといえば、バカな連中とまた毎日顔を合わせられることだけ。それのためだけに高校に通っていると言っても過言ではない。
アホな連中の顔を見るためだけに、真っ黒に輝くヘルズゲートを毎日くぐる。しかしその門も見方を変えれば全く別物で、帰る時にはあら不思議、真っ白に輝くヘブンズゲートに衣装チェンジ。
苦あれば楽ありを幼い頃から知らず知らずに体感しているんだと思うと、学校っていいな。
久しぶりの学校だからか、そんなことを考えながら連はヘルズゲートを真顔で通過した。
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既に八割のクラスメイトが集まったその空間は、各地で発生した談笑の嵐がぶつかり合い、ヘビーメタルを奏でていた。

「よぉ連、おひさ」

イヤホンを右耳に付けた柳翔平が左腕で机に頬杖をついたままヒョイと連に向けて右手を挙げる。柳と机を挟んで座る

「一昨日も会ったけどな、久しぶり」

「え?なんてぇ?」

「いや聞こえるだろ」

「あぁごめん、ここヘビメタがうるさいから」

「ヘビメタなんてどこにも流れてねーよ」

「え?なんてぇ?」

「どう考えてもそのイヤホンからだろうが」

「あホントだ。でさでさぁ、聞いた?転校生の話」

ヘビメタを止めた柳が話題を半回転させ、思い出したかのように連はスマホを取り出す。

「昨日MILEで言ってたヤツだろ?」

「まさかの女子らしいぜ〜」

「マジか」

いやらしい笑顔を浮かべる柳が連の右腕をポンと叩く。転校生女子という単語だけで興奮を隠せない男子高校生あるある。まさにそれだ。

「でも転校生って男も女も微妙なことが大半じゃね?」

「それは来るまで分かんないってもんですよ連さん〜」

「いやいやこういうのは期待しねー方がいいって」

「俺は可愛い子に賭ける、連はブスに賭けるか?」

「…いや何を」
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