朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
最初っからひっかかってはいた。
咲桜の存在は生徒に収まりきらないし、在義さんの娘だから護る、だけでは器が小さすぎる。
……そのうち、咲桜にはキスしてしまうし。
咲桜が夢うつつで憶えていなかったから明言はしていないけど、どうにも触れたくてしょうがなくなるときがある。
けれど、自分はあくまで偽物婚約者。
立場的に咲桜を護るためだけの存在。
駄目だ……足りない。咲桜の傍にいていい理由がない。
「……考え込んじゃったよ、あいつ」
「愉快だねえ」
楽しそうな幼馴染たちに目を遣ると、二人揃って吹き出している。
「はははっ、りゅうが情けねー」
「くくっ、ちょっと、どこにそんな面白要素隠してたのさ。愛しちゃうね、まったく」
……自分は今どんな顔をしているのだろう……。
本当イラつかせるの得意だよなあ、こいつら。
「最近寝れねーんだよ。前にも増して」
イラつきが声にも表れると、吹雪が軽く瞳を瞠った。