朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


「逃げられたなら追えばいいだろ」


「そう出来たらいいよ……。俺は憶えてくれてるかもわかんねーんだから……。いきなり話しかけたの、変質者って思われてたら立ち直れない……」


「………」
 

学内で話しかけただけで変質者扱いはされないだろう。先輩後輩なんだから。


自分から明かすのはおかしいと思うから言わないでいるが、松生は憶えている。


それに、この前一度対面しているのだから。


――……あれ?


「お前、前にここで咲桜と松生と逢ったとき、『はじめまして』って言わなかったか?」
 

二人に対して、そんな風に言っていたように記憶している。


「ああ……言った。笑満ちゃん忘れてると思ったし、近所でコロシがあったなんて忘れてた方がいい記憶だろ……」


「………」
 

なんという両思い。


同じ方向に心配しているために噛みあっていない。

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