朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「……遙音くん、憶えてるのかな……あたしのこと」
「私は憶えてるんじゃないかなって思うよ。笑満にだけ呼び方違うし、ただの後輩に逃げられただけで凹むような落ち込み具合、流夜くんが報告してくるわけないし」
「やっぱり流夜くんなんだ」
「あ」
はめられた。いや、自分からはまったのだけど。
「仲よさそうでなによりだよ。……ごめんね、旧校舎から出るところでばったり逢っちゃって……あたし、言うって決めてたのに逃げて……夜々さんのとこも、行けなくなっちゃうし……」
放課後に夜々さんを訪ねる件、笑満から「やっぱり今度にする」と言われてなしになったのだ。
そのときは疑うことはしなかったけど、先輩から逃げたことで自身にもショックがあったようだ。
意に反して逃げてしまった。
決意したのに。現実が目の前に迫ると、足は引いてしまう。
……うん。