朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


「なに? 不眠、悪化してるの?」


「悪化って言うか……なんか落ち着かなくて眠れない。いつからだったかな……」
 

最近急に、そんな症状が出てくるのだ。


あるはずのものがないような感じ。手さぐりになにかを求めてしまう衝動。


吹雪や降渡の心配する、以前にはなかった状態だ。


なにかを抱きしめて眠れたらいいのに。……あれ?


「……咲桜がここにいたとき……?」
 

思い返してみると、頃合いが合致する。
 

以前、ここに来た咲桜が大雨で帰れなくなって、ぐだぐだしたやり取りをしたあと、咲桜が腕にしがみついて寝てしまい、解けなくて一緒に寝たことがあった。


あの折は自分でも驚くほど熟睡していた。


そしてその辺りから、不眠の症状が悪化した。


「え、なになに? 咲桜ちゃん泊まったの?」


「いや降渡。流夜にそんな甲斐性ないでしょ」

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