朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
そんな言葉が頭に浮かんで思わず抱きしめ返したときに気づいた。
……また眠っちゃってる。
やっぱり眠いことは眠かったみたい。少しだけ、苦笑がもれた。
大分すきの、上はなんなんだろう。
抱き寄せていると、指先が流夜くんの髪に触れる。
流夜くんはよく頭を撫でてくれる。
私は小さな頃から背が高い方だったから、新鮮な感覚だった。
ただ嬉しくなる。
……そっと、手のひらで髪に触れてみる。
……誰かをすきなることを、自分にゆるさないでいた。
自分が生きていることに否定的だったし、自分の命は在義父さんへの恩返しに使うつもりだった。
だから、すきな人はいらなかった。
作らなかった、ではなくて、いらなかった。
でも今、私の傍には流夜くんがいる。
……ひとつだけ、思いあたった言葉がある。
これが私の感情なのだろうか。
《流夜くんを、私が幸せにしたい。》
「……これで、いいのかな……」
流夜くんと同じ気持ちは、これなのかな。
……そうだったら、いいな。
腕の中で眠る優しい人が目を覚ましたら、訊いてみよう……。