朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
握られた手が、小刻みに震えている。
……逃げ出すことにも勇気はいったはずだ。
それでも、今は真正面から向き合っている。
「ありがとう……憶えていてくれて。また、友達になりたい。……笑満ちゃんが傷つかなかったら」
「それはあたしが心配するところだよっ。……あたしや、あたしの家族が近くにいて、大丈夫?」
……松生の家族も、遙音になにも出来なかった側なのだ。
そして、事件や家族のことは、幼かった松生よりたくさん知っていただろう。
遙音の表情がやわらぐ。
「笑満ちゃんがもう俺から逃げないでいてくれたら、大丈夫かな」
その返事に、一瞬咲桜と俺は息が詰まった。
まさか聞かれていた……?
そんな不安が過って遙音を見遣るが、松生を見てしかいなかった。
どうやら遙音オリジナルの言葉みたいだ。
……何故俺と似ている。