朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
在義さんの娘、というフィルターが消えて、一人の存在として立っていた。
勿論、教師として生徒を護りたかった、とか後付の理由はいくらでもあるけど、思い返せばただゆるせなかっただけなのだ。
この子に対してのそういう位置を、他の男にやりたくない、と。
そういう位置。
俺に提示されたのは、婚約者という位置。
結局は偽婚約という形で収まったが、それでよかったと安心する部分すらあった。
たとえ偽モノでも、咲桜に対してのその位置には今、自分がある。
ほかには誰もいない。
……いつからかはわからない。
ただもう、その時点で大分惚れていたんだと思う。
いつか、自分の中に収まりきらない恋心になるくらいには。