朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
頭の中で咲桜の言葉が響く。
が、やっぱり自分の空耳だろうか。
……だって、咲桜が?
顔を真赤にして、泣きそうな顔で口を動かす。
『……すきです、流夜くんが。にせものじゃ、私もいやです。……本物に、なりたい』
『………』
これはまだ夢の続きか?
赤らんだ顔の咲桜がいっぱいいっぱい、言葉しているのがわかる。
すき? 咲桜が? ……俺のことを?
『答え、です。流夜くんがすきだから、ちゃんと、彼女になりたい、です……』
咲桜は、目を逸らさなかった。
あれほど俺を前にして逃亡を繰り返していた咲桜が、真っ直ぐ正面からそう言った。
『………』
触れれば溶けてしまいそう。
氷に触れるように、震える手で、恐る恐るその頬に触れた。
熱っぽくなっているほっぺた。この子が生きている証拠。
そして、そのぬくもりが、先ほどの言葉が幻でないと教えてくれた。