朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


『ああ……』
 

こんな夢みたいな幸福感が、あるのか。


……全部、咲桜がくれた幸せだ。


咲桜は俺を幸せにしたいって言ってくれたけど、もう十分過ぎるほど幸せだよ。
 

とらえたままの頬。


額に口づけると、小さく震えた。まだ慣れてはいないようだな。
 

けれど、もっと慣れてほしくて、そして触れたくて、額や頬や、瞼にキスを落とす。
 

その度に小さく反応があるので、やっぱり自分は調子に乗ってしまう。
 

いつの間にか、咲桜の目元が濡れていた。


それに気づいて、少し顔を離す。


『……咲桜?』
 

親指で目元を拭うと、やはり涙だった。


な、泣くほど嫌だったか……。


こういう反応を見て非道く自己嫌悪に陥るのも、毎度のことだった。


それでも咲桜に触れられずにはいられない。
 

咲桜は慌てて目元を拭って笑った。

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