朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


呆れた風の声に、咲桜は離れるように俺の胸を押してきた。
 

廊下にいたのは二年生で、藤城主席と謳われるほど優秀生の夏島遙音だった。


苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 

俺の以前からの知り合いで、素顔の方も承知している。
 

咲桜が離れようとしたのがまた気に入らなくて、咲桜の肩に腕を廻した。


「流夜くんっ」


「じんぐーって実は独占欲強いのな」
 

遙音はため息をつく。


「でも人目は気にしろよ。お前は教師辞めれば済むけど、咲桜はそうじゃねえんだから」


「………」
 

咲桜?
 

今、遙音は呼び捨てにした?


「咲桜! あーもうごめん咲桜。ちょっと急ぎ過ぎた」

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