朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
side流夜⑩
「えっ、お仕事になったの? 大丈夫?」
咲桜と華取の家に帰るなり、在義さんから咲桜に電話がかかった。
帳場が出来てしまい、帰れなくなったそうだ。
「ううん、日を改める。……うん、気を付けて」
通話、終了。
「……だそうです」
咲桜が悲しそうな瞳で見てくる。
「………」
逃げたな。
直感的にそう思った。
電話の向こうから聞こえた在義さんの声が若干上ずっていた。
帳場に臨むときの緊張感のある在義さんの声とは少し違っていた。
電話による聞こえの違いを差し引いても、どこか焦っているようだ。
そして家に入る前に、吹雪に連絡を取ってある。
現在この県内で、捜査本部が出来るような事件は発生していない。
まさかと思って確認しておいたら、見事にはまってくれた。
俺がなにを話しにきたのかを悟って、仕事だと言って逃げたのだろう。