朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「……うん」
在義さんからのゆるしがなかったのがショックなのか、咲桜はまだ浮かばない。
せっかく楽しい日だったのに……そんなことが口から聞こえそうだ。
……そういう淋しさを取り除くのも、俺が咲桜に望んだ位置だ。
いつも笑顔でいてほしいから。
「また、デートしよう。咲桜の行きたいところ考えておいてくれ」
そう言うと、咲桜は瞳を見開いた。
「え……いいの?」
「いいに決まってるだろ。俺は咲桜以外とデートなんて出来ないみたいだからな」
昼間に咲桜に話した、学生時代のことは真実だ。
誰かと一緒にいて、この時間の永続を願ったのは初めてだ。
咲桜と一緒だと、早く署へ行きたい、なんて思えるわけがないと気づいた。
むしろ咲桜と一緒にいたいのだと。
「で、でーと?」
「うん? 違ったか?」
その表現は嫌だったろうか。訊き返すと、咲桜は首を横に振った。
「ううんっ! う、嬉しい! ま、またよろしくお願いします」
律儀に頭を下げた。