朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
もう一度、と口づけを繰り返して――咲桜が逃げないように、逃げたいと思わないように……大事に触れた。
この子は、一生の宝ものみたいな子だ。
……俺の幸せの、象徴みたいな子。
こんなに感情が動いたのは初めてだ。
「あ」
俺が声をあげると、咲桜が小首を傾げた。
「? どうしたの?」
忘れるところだった。
むしろ在義さんの件がごちゃっとしていて忘れてしまっていた。
「咲桜、これ」
荷物は少ないけど申し訳程度に持っている鞄から取り出したのは、小さな箱だった。
「? なに?」
「いや……こういうのが大丈夫かわからなかったんだけど、咲桜に合うかと思って」