朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
そんな風に名乗ると、女性はふわっと唇に笑みを見せた。
この方、俺の正体を知って問いかけている。
「然様(さよう)でしたか。確か神宮流夜さん。私は朝間箏子。咲桜の師匠ですよ」
朝間――咲桜が何回か口にしていた師匠とはこの人だったのか。
「娘をお呼びですか?」
……疑うまでもなく、朝間先生の母親だ。
「いえ。在義さんも信頼する方と伺い、お願いに参りました」
「あら、なんでしょう?」
「今、華取さんの家に咲桜さんしかいません。交際の報告に来たら在義さんとすれ違いになってしまいまして。俺が遅くまでいるのも問題でしょうから引いて来たのですが、一人にしておくのも危険かと思い、気にかけてやってほしいとお願いに来ました」
「まあ……そうでしたか。在義ったらなにをしているのかしら。神宮さん、お手数おかけしましたわね。大丈夫です。留守がちな在義に代わって咲桜を育てたのはわたくしですから、安全は保障いたします」
「よろしくお願いします。……大事な子、なので」