朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
最後は、ふっと口をついて出た。箏子さんは感情の読めない笑みを見せた。
「そうですか。……では、大事にしてくださいね」
もちろんです。そう答えて、朝間家を辞した。
停めておいた車に乗り込み、スマートフォンを取り出す。
かける先は、吹雪に連絡した時点で決めていた。
『おう? なんだ、電話なんて珍しいじゃねえか』
渋い、若干無骨な声に問いかける。
「龍さん、そっちに在義さんいたりする?」
『在義? 来てねえぞ。なんだ、緊急の連絡か?』
「いや、そういうわけじゃないんだ」
やっぱり龍さんはまだ無理か……。