朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
声の調子から嘘発見でも出来たらいいのだけど、こと龍さんと在義さんには未だに通用しない。
やはり師匠は上手か。
今も、動揺も見えなく、本当にいないのかもしれないという疑念が出来てしまう。
「また、咲桜を連れて行くよ」
『おう』
それだけ伝えて、電話を切った。
もしかして在義さんは龍さんのところにいるかと思ったが、どうかはわからなかった。
咲桜のいる華取の家を振り返って、思わず口元が綻ぶ。
最終的な目的は果たせなかったけど、それでも、咲桜の恐怖や不安が少しでも薄れたらいい。
……受け取ってもらえてよかった。すぐにつけていられるほど、首にある傷は薄らいでいると信じたい。
あの子からたくさん幸せをもらうように、幸せをあげたいと思っている。