朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
呟きのような密やかなそれは、後悔の響きとは違った。
五月の空。
幼い頃の笑満と先輩は、同じ空の下にいたのだろうか。今は?
記憶ではなく時間も戻らない今に生きる、二人は?
並んでいる? 近くに、いる?
「……しばらくはね、告白はしないでおくつもり」
笑満は鞄を後ろ手に持ちかえた。
「しないの?」
すごく仲がいいのは傍から見てもわかるのに。
笑満の特攻精神をわかりきっている私には意外な言葉だった。
「うん。……少し、友達として時間を取り戻したいの。ずっと一緒にいられたかもしれない時間が、やっぱり淋しいから……」
一緒にいられたかもしれない、過去の時間。
友達として、幼馴染として。