朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
「失えねーよ。……大切過ぎて」
だからどうと、言ってやることが出来ないんだけど。
俺自身も、親類からは厄介者扱いを受けた過去がある。
龍さんの祖父の許に長く落ち着いたけど、確かに咲桜と付き合うことを、自分の家族のことで、咲桜の家族のために悩んだことはない。
咲桜の唯一の家族は、直接、神宮家(うち)の事件にこそ関わっていないが、現在は一警察本部のトップだ。
理解、とは表現が違うかもしれないが、遙音のように思い悩むことはなかった。
「あー。なんかぶっ飛ばしてー」
「落ち着け阿呆」
「ストレス発散。樹とか殴ってみるの」
「手が痛いだけだぞ。大体――お前の感情はただの友情なのか?」
「……殴ったことあんの?」
胡乱に訊かれた。