朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
事件後、親戚に引き取り手がなく施設に入れた、あれは誤算だったと思っている。
少しでも早く世間の好奇の瞳から護らねばと、護られる側に立たされた経験のある吹雪や降渡と話したのだが、遙音は俺たちのタイプとは違っていた。
遙音は自立心が強い。
だからと言って、当時高校生の自分たちが引き取ることも出来なかったが、もっと方策を考えるべきだった。
遙音のための対応策を。
そんな経緯があって、俺たちは遙音に対して、親代わりではないが似たような立場の感覚だった。
「そろそろ教室戻った方がいいんじゃないか?」
時計を見遣ると、時間は経っている。
遙音は「おー」と返事をして、緩慢に資料室を出て行った。
出る直前、少しだけ振り返った。
「じんぐー。末永くお幸せに」
にっと言い残して、扉が閉まる音に消えた。
「………」
一瞬呆気にとられた。
遙音にそんなことを言われるなんて思ってもみなかったから。
末永く。咲桜と。
「……当然」
一緒にいるよ。