朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】


笑満に流夜くんとの偽婚約のことを話して、逢いたいと言うので旧校舎で流夜くんと逢った時のことだ。


遙音先輩が姿を見せて、心臓が止まるかと思った。


ばれてしまった、と。


けど実際そんな心配はなくて、先輩は流夜くんの味方だったようだ。


今では流夜くんに歯止めをかけてくれる存在だ。
 

……そういえば、あのときも笑満は硬直していた。
 

笑満は先輩に片想いしていると公言していたから、いきなり好きな人が現れてびっくりしたのかと思っていたけど……。


「あの時遙音くん『ハジメマシテ』って言った。安心、したの。あたしのこと、忘れてるって。あの惨劇は少しでも薄れて、遙音くんに残っていなかったらいいって、思ってたから。……でも、それ以上に淋しくて。

……あたしです、笑満ですって、言いたかった。前みたいに、笑満ちゃんって呼んでほしかった。……あたしの心、どっちにも転がれなかった。

それでさっき――笑満ちゃんって呼ばれて、びっくりしちゃった。遙音くん、まさか憶えてたのかな……それとも、ただの偶然なのかな。一瞬じゃわからなくて、逃げ出した。……ごめん」


「……うん」
 

知らなかった。笑満のそんな話。

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