朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
ゴツン、と二人揃って龍さんに拳骨を喰らった。
力加減はされていたらしく、咲桜は頭を押さえただけだったが、俺はあまりの衝撃に蹲った。
ほ、星が散った……。
「娘(じょう)ちゃん、店閉めてるから、中入れ。大丈夫、周りには誰もいない」
龍さんは咲桜に言い、俺の耳を摑んで店に引きずった。
「龍さん痛いっ!」
「黙れガキ。少しは娘ちゃんの不安考えろ」
不安? 今度は、咲桜は逃げずに唇を噛んでついてきていた。
――その手を取って導きたいのに、今は咲桜がその距離を拒んでいた。
手を伸ばしても取ってくれない。摑んでも、握り返してはくれない。
……そんな気がした。
「……ほら、外からは見えねえ。安心して話しな。俺は奥にいっから」
龍さんは窓総てにシャッターをかけ、ついでだと言って二人分の紅茶を用意してカウンターの奥へ消えた。